三角置換が「偶然」じゃない理由

数学積分三角置換恒等式
tanで置換する積分、なんであれでうまくいくの?
23:48
リュウツー先生
リュウツー先生
tanで置換する積分、具体的にはどんな形の積分をイメージしてる?
たとえば
a2+x2\sqrt{a^2+x^2} を含むもの?
a2x2\sqrt{a^2-x^2} を含むもの?
・それとも dxa2+x2\int\frac{dx}{a^2+x^2} のような形?

どのケースでどんな置換をしているか教えてもらえる?
23:48
えーどれだっけ、3つ目かな。
23:49
リュウツー先生
リュウツー先生
いいね!!具体的には
dxa2+x2 \int \frac{dx}{a^2+x^2}
x=atanθx=a\tan\theta とおく置換だね。

まずは、どこまで理解できているか教えてほしい。番号で答えてね。

1. 置換の手順(x=atanθ, dx=asec2θdθx=a\tan\theta,\ dx=a\sec^2\theta\,d\theta)は知っている
2. 置換すると分母の a2+x2a^2+x^2a2sec2θa^2\sec^2\theta になる理由までわかる
3. そもそも三角置換を何のためにするのか意味がよくわかっていない

どれかな?番号で答えてね。
23:49
たしかにうまくいくのはやったからわかるけど、裏というか背景というか、なんかあるのかなと。
23:52
リュウツー先生
リュウツー先生
いいね!!
tan置換の裏には――
x2+a2x^2+a^2 を三角関数の恒等式でスッキリさせる」という狙いがあるんだよね。具体的にはこんなイメージ:

1. 直角三角形を考える
隣辺を aa,対辺を xx とすると,斜辺は
a2+x2\sqrt{a^2+x^2}
になる。

2. ここで角 θ\theta を定めて
tanθ=xax=atanθ\tan\theta=\frac{x}{a}\quad\Longrightarrow\quad x=a\tan\theta
とおくと,先ほどの斜辺は
a2+x2=a1+tan2θ=asecθ\sqrt{a^2+x^2} \\ =a\sqrt{1+\tan^2\theta} \\ =a\sec\theta
に書き換えられる。

3. さらに微分すると
dx=asec2θdθdx=a\sec^2\theta\,d\theta
だから,もとの積分
dxa2+x2\int\frac{dx}{a^2+x^2}

asec2θdθa2sec2θ=1adθ\int\frac{a\sec^2\theta\,d\theta}{a^2\sec^2\theta} \\ =\frac1a\int d\theta
と超シンプルになるわけ。

要は恒等式
1+tan2θ=sec2θ1+\tan^2\theta=\sec^2\theta
を使って,ゴチャついた a2+x2a^2+x^2 を一気に“ほぐす”のが三角置換の本質っていう話なわけです。

わかった?
23:52
偶然、微分と分数が噛み合って、計算するとたまたまうまくいく形ってこと?
23:54
リュウツー先生
リュウツー先生
素晴らしい!!その疑問、大事だよ。

結論から言うと、tan置換が「たまたま噛み合う」わけではなく、恒等式と三角関数の定義を利用して意図的に式をシンプルにしているんだ。ポイントは次の2つ。

1. 恒等的に成立する三角関数の関係式
1+tan2θ=sec2θ1+\tan^2\theta=\sec^2\theta
があるから、もとの式 a2+x2a^2+x^2
a2(1+tan2θ)=a2sec2θa^2\bigl(1+\tan^2\theta\bigr)=a^2\sec^2\theta
の形に置き換えられる。

2. x=atanθx=a\tan\theta と置くことで、dxdx も同じ sec2θ\sec^2\theta を含む形になる。
dx=asec2θdθdx=a\sec^2\theta\,d\theta
だから分子と分母で sec2θ\sec^2\theta が打ち消し合って、結果として積分が dθ\int d\theta になるわけ。

このように、微分の結果と分数の形が「偶然」ではなく、最初から恒等式を活用するためにそろえてあるんだ。
わかった?やったぜ!
23:55
なんかtanの逆関数って聞いた
16:32
リュウツー先生
リュウツー先生
いいね!!
tan置換で出てきた角度θを元の変数xに戻すために使うのが、tanの逆関数 “arctan” だよ。記号では
θ=arctan(xa)\theta = \arctan\Bigl(\frac{x}{a}\Bigr)
もしくは
θ=tan1(xa)\theta = \tan^{-1}\Bigl(\frac{x}{a}\Bigr)
と書く。ここでの定義は「あるyがあって tany=u\tan y = u となるようなyを y=arctanuy=\arctan u とする」というもの。ただし範囲を
π2<y<π2-\tfrac{\pi}{2}<y<\tfrac{\pi}{2}
に制限して、一意に決めてるんだ。

だから先ほどの積分結果
dxa2+x2=1aθ+C\int\frac{dx}{a^2+x^2}=\frac1a\theta+C
のθにこのarctanを代入すると、
dxa2+x2=1aarctan(xa)+C\int\frac{dx}{a^2+x^2} \\ =\frac1a\arctan\Bigl(\frac{x}{a}\Bigr)+C
となるわけ。これで「何故arctanが出てくるのか」もスッキリだね。

わかった? やったぜ!
16:32
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