高次元における“回転作用素”のビベクター表示

ベクトル解析微分テンソルビベクター高次元
rotV=∇×Vって、3次元限定の操作ですよね。bivectorを利用して4次元以上でも使えるようにすると、どう書ける?偏微分記号も用いて実際の操作がわかるように教えて。
15:19
リュウツー先生
リュウツー先生
なるほど、4次元以上での ×V\nabla\times V にあたる操作をビベクター(二重ベクトル)として書きたいわけだね。

ちょっと確認させてほしいんだけど、
1) 成分表示で「(iVjjVi)eiej(\partial_i V_j - \partial_j V_i)e_i\wedge e_j」の形を知りたい?
2) ジオメトリック代数の記法で V\nabla\wedge V と書く方法を知りたい?
3) それとも微分形式(外微分 dVdV)としての表現で十分?

どの表現がいちばんイメージしやすそうかな?教えてもらえる?
15:19
1かな。慣れたら3でいいんだろうけど、抽象的すぎてわからんので。
15:40
リュウツー先生
リュウツー先生
それじゃあ、現状の理解度を確認するためにクイズを出すね。
4次元のベクトル場 Vi(x)V^i(x) に対して定義される反対称 2 階テンソル
Bij=iVjjVi B_{ij} = \partial_i V_j - \partial_j V_i
は、何個の独立成分を持つでしょう?選択肢から選んでね。

A.4
B.6
C.8
D.12
15:40
4C2で6じゃないかな。だからB。i=jの場合を入れると10だけど、入れない気がする。選択肢にないし。
15:43
リュウツー先生
リュウツー先生
いいね!!
4次元以上での“回転作用素”は、反対称2階テンソル(ビベクター)として表現するわけです。
偏微分記号は
i=xi \partial_i=\frac{\partial}{\partial x^i}
と書くことにして、成分表示は
Bij=iVjjVi,(i<j) B_{ij}=\partial_iV_j-\partial_jV_i\,,\quad (i<j)
と定義します。

このときビベクターそのものは、基底二重ベクトル eieje_i\wedge e_j を用いて
B  =  i<j(iVjjVi)eiej B \;=\;\sum_{i<j}(\partial_iV_j-\partial_jV_i)\,e_i\wedge e_j
と書けるんだよね。

ここまではいい?
15:43
うん。<strong>いい</strong>よ〜〜。
15:45
リュウツー先生
リュウツー先生
では続きを説明するね。4次元の場合、成分は全部で6つあったわけだけど、具体的には以下の6つになる。

B12=1V22V1,B13=1V33V1,B14=1V44V1,B23=2V33V2,B24=2V44V2,B34=3V44V3. \\ \begin{aligned} \\ &B_{12}=\partial_1V_2-\partial_2V_1\,,\quad \\ B_{13}=\partial_1V_3-\partial_3V_1\,,\\ \\ &B_{14}=\partial_1V_4-\partial_4V_1\,,\quad \\ B_{23}=\partial_2V_3-\partial_3V_2\,,\\ \\ &B_{24}=\partial_2V_4-\partial_4V_2\,,\quad \\ B_{34}=\partial_3V_4-\partial_4V_3\,. \\ \end{aligned} \\

これを基底二重ベクトル eieje_i\wedge e_j で合成すると、

B  =  1i<j4Bij  eiej=i<j(iVjjVi)eiej. \\ B \;=\;\sum_{1\le i<j\le4}B_{ij}\;e_i\wedge e_j \\ =\sum_{i<j}(\partial_iV_j-\partial_jV_i)\,e_i\wedge e_j\,. \\

ポイントは、

1. i=xi\partial_i=\frac{\partial}{\partial x^i} という偏微分記号で成分を作る
2. 反対称性 (i<j)(i<j) を保つことで、無駄なく独立成分だけを扱う

というところ。
この書き方はそのまま nn 次元にも拡張できて、

(V)ij=iVjjVi,V=i<j(iVjjVi)eiej \\ (\nabla\wedge V)_{ij}=\partial_iV_j-\partial_jV_i\,,\quad \\ \nabla\wedge V=\sum_{i<j}(\partial_iV_j-\partial_jV_i)\,e_i\wedge e_j \\

と書けばOK。3次元の ×V\nabla\times V は、このビベクターのうち「e1e2,e2e3,e3e1e_1\wedge e_2,e_2\wedge e_3,e_3\wedge e_1 に対応する成分」を軸ベクトルに戻したもの、という理解になるわけです。

わかった?
15:45
じゃあdivはどうなる?
15:48
リュウツー先生
リュウツー先生
素晴らしい!!

発散(div)は,ベクトル場のスカラーへの収縮操作として成分表示すると,任意の次元 nn
divV  =  V  =  i=1niVi  =  iVi \operatorname{div}V \;=\;\nabla\cdot V \;=\;\sum_{i=1}^n \partial_i V_i \;=\;\partial_i V_i
で定義されます。ここで
i=xi,V=Viei,Vi=Vi (直交座標系で下・上添字同一) \partial_i=\frac{\partial}{\partial x^i},\quad V=V^i\,e_i,\quad V_i=V^i\ (\text{直交座標系で下・上添字同一})
となるわけです。

要するに,回転が「反対称2階テンソル」なら,発散は「成分を同じ添字で足し合わせる収縮」っていうふうに考えるとわかりやすいですね。

わかった?
15:48
マクスウェル方程式はどうなる?
15:49
リュウツー先生
リュウツー先生
素晴らしい!!

では,先ほどの「回転作用素」を Faraday テンソル(ビベクター)
F  =  12Fijeiej F \;=\;\frac12F_{ij}\,e_i\wedge e_j
と置くと,4次元時空ではマクスウェル方程式は次の2式にまとめられます。

1.同次方程式(ホモジーニアス)
∇∧F=0
すなわち成分で書くと
(F)ijk=iFjk+jFki+kFij=0(0i<j<k3) (\nabla\wedge F)_{ijk} =\partial_iF_{jk}+\partial_jF_{ki}+\partial_kF_{ij} =0 \quad(0\le i<j<k\le3)
これが
 ∇・B=0, ∇×E+∂B/∂t=0
に対応します。

2.非同次方程式(インホモジーニアス)
∇·F=μ₀J
すなわち成分で書くと
(F)j=iFij=μ0Jj(0j3) (\nabla\cdot F)_j =\partial^iF_{i j} =\mu_0\,J_j \quad(0\le j\le3)
これが
 ∇·E=ρ/ε₀, ∇×B-∂E/∂t=μ₀J
に対応します。

――まとめると,
∇∧F=0, ∇·F=μ₀J
という2つのテンソル方程式でマクスウェル方程式はコンパクトに書けるわけです。

わかった?
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