複素電流の虚部の物理的意味

電磁気交流回路フェーザ無効電力位相
複素電流に於いて虚数部分が何を表しているのか分かりやすく教えて
09:12
リュウツー先生
リュウツー先生
いい質問だね。まず意図をはっきりさせたいんだけど、教えてほしいことがいくつかあるんだ。答えてくれる?

1) 「複素電流」で言っているのは、交流のフェーザ表現(振幅を複素数で表すやり方)についての話で合ってる?それとも時間領域で複素表示(e^{jωt}を使った表現)の話?

2) 求めているのは「数学的な虚部の意味(つまり複素数としてどう扱うか)」なのか、「物理的な意味(電力や位相差とどう関係するか)」どっちが知りたい?

3) あなたの学年・数学の習熟度はどんな感じ?(高校生なら高校レベルで、大学ならより詳しく説明するよ。)

これで意図がはっきりしたら、次に簡単な理解度確認のクイズを1問出すね。答えてくれたら「いいね!!」って褒めつつ本題に入るよ。
09:12
物理的な意味で知りたい。
高校生レベルで教えて
09:15
リュウツー先生
リュウツー先生
いいね、物理的な意味で高校レベルね。現状理解度を確認するクイズを1問出すよ。スマホでも答えやすい選択式で。

次の状況を考えて。交流電圧がある点で瞬時値として v(t)=V0cos(ωt)v(t)=V_0\cos(\omega t) と表されるとする。これに対して電流が位相差 +90°(つまり電圧より90°進んでいる)で振動するとき、複素(フェーザ)表現での電流は虚数だけ(純虚)になることがある。この「純虚の電流」が意味する物理的なことはどれか、最も適切なものを選んで。

A) 回路は常に電力を取り出す(常に正の実効電力を消費する)。
B) 回路は平均して実効(有効)な電力をやりとりしない。電力の出し入れ(蓄え・返却)が周期的に起きるだけで、熱にはならない。
C) 回路は直ちに破壊される危険がある(電流が無限大になる)。
D) 電流の向きが常に一定で反転しない。

答えてくれる?選んだ記号だけでOK。
09:15
B
09:17
リュウツー先生
リュウツー先生
いいね!!B、正解だよ。

簡単にまとめると、複素(フェーザ)表現での「虚数部分」は「位相のズレ」と「無効電力(reactive power)」を表しているということ。式で書くと、瞬時電圧と電流をそれぞれフェーザで表して
v(t)=Re{Vejωt},i(t)=Re{Iejωt}v(t)=\mathrm{Re}\{V e^{j\omega t}\},\quad i(t)=\mathrm{Re}\{I e^{j\omega t}\}
とすると、複素力率(複素電力)Sは
S=12VI=P+jQS=\tfrac{1}{2}VI^* = P + jQ
で、実部 P=12Re{VI}P=\tfrac{1}{2}\mathrm{Re}\{VI^*\} が平均(有効)電力、虚部 Q=12Im{VI}Q=\tfrac{1}{2}\mathrm{Im}\{VI^*\} が無効電力になるんだ。

つまり、もし電流が純虚(例:I=jI0I=jI_0)なら VIVI^* は純虚数になって Re{VI}=0\mathrm{Re}\{VI^*\}=0、だから平均して回路はネットでエネルギーを消費しない。代わりに電源と回路(コンデンサやコイル)が周期的にエネルギーをやり取りしているだけで、熱にはならないわけ。符号は位相の進み・遅れを示す:電流が電圧より90°進んでいれば(+j)コンデンサ寄り、90°遅れていれば(−j)コイル寄り、っていう話なわけです。

ここまでOK?わかった?やったぜ!
09:17
位相のズレ、という点から見てみると、高校物理の範囲内に於けるコイルとコンデンサの消費電力が0であることと繋がりがあるのかな?
09:19
リュウツー先生
リュウツー先生
いいね、そこを繋げて考えるのは大事だ。まず確認なんだけど、式(フェーザや瞬時電力の式)を少し使った説明も見たい?それとも概念的な説明だけで十分?

現状理解度を確認するクイズを1問出すよ。選択式ね。

次のうち、コイルやコンデンサが平均して消費電力がゼロになる「本質的な理由」として最も適切なのはどれ?

A) 理想的なコイル・コンデンサには内部抵抗がないから。
B) 電圧と電流が90°ずれているため、瞬時電力の正負が打ち消し合って平均がゼロになるから。
C) 電荷や磁場にエネルギーを蓄え、それを周期的に電源に返すから。
D) 交流だから全ての素子は平均消費電力ゼロになるから。

選んだ記号だけで答えてくれる?
09:19
B
09:20
リュウツー先生
リュウツー先生
いいね!!B、正解だよ。概念と式でつなげて説明するね。

まず数学的に。電圧と電流を
v(t)=Vmcosωt,i(t)=Imcos(ωt+φ)v(t)=V_m\cos\omega t,\quad i(t)=I_m\cos(\omega t+\varphi)
とすると瞬時電力は
p(t)=v(t)i(t)=VmImcosωtcos(ωt+φ)p(t)=v(t)i(t)=V_mI_m\cos\omega t\cos(\omega t+\varphi)
で、積和公式を使うと
p(t)=VmIm2(cosφ+cos(2ωt+φ))p(t)=\frac{V_mI_m}{2}\big(\cos\varphi+\cos(2\omega t+\varphi)\big)
周期平均をとると、cos(2ωt+φ)\cos(2\omega t+\varphi) は平均ゼロだから平均電力は
P=VmIm2cosφP=\dfrac{V_mI_m}{2}\cos\varphi
ここから分かるのは、位相差 φ=±90\varphi=±90^\circ のとき cosφ=0\cos\varphi=0 になって平均電力 P=0P=0 になるということ。つまり瞬時電力の正の部分と負の部分が打ち消し合って、純粋な熱(有効電力)にはならないんだ。

物理的にはどういうことかというと、コイルは磁場にエネルギーを、コンデンサは電場にエネルギーを蓄えて、半周期ごとにそれを電源に返す。だから「位相が90°ずれて瞬時の正負が打ち消される(B)」という現象の背後には「エネルギーを蓄えて返す(C)」という物理機構があるわけ。符号(+j/−j)は電流が電圧に対して進んでるか遅れてるかを示して、無効電力 QQ として複素電力の虚部に現れるっていう話なわけです。

ここまではいい?わかった?
09:20
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