セオラゴレビュー 岡竜之介レビュー結果(見本)
- 対象
- 高校生・物理
- 教材
- 光電効果。2組の振動数と阻止電圧から、プランク定数と仕事関数を求める問題
- 観測方法
- 解答中の筆記と、解答後の本人への確認
今回の結論
今回の答案には、見た目の上では「文字式の計算が複雑になり、途中の項を消し忘れた」という一つの計算ミスが現れていました。しかし、解いた順序と本人の説明まで確認すると、原因は二つに分かれます。
- 式を展開した目的を、途中の処理中に見失った
- 二元連立一次方程式の解き方を、意味ではなく手順として覚えていた
この二つは対策が異なります。計算問題を増やすだけでは、同じ形の失点が残る可能性があります。
答案で起きていたこと
問題から、プランク定数 h と仕事関数 W を未知数とする2本の式を立てるところまではできていました。内容理解がまったくない状態ではありません。
その後、生徒はまず h を求め、得られた複雑な分数を元の式へ代入して W を求めました。この方法でも原理上は解けますが、通分と多項式の展開が増え、最初の計算で誤ると次の計算にも誤りが伝わります。
さらに、生徒は共通項を消すために式を展開し始めたものの、符号へ注意して処理している間にその目的を忘れました。展開後の式を見て、今度は「きれいに括る」という別の操作を始め、本来消えるはずの項を残しました。本人も、最初は消そうとしていたが、途中でその意識が飛び、目の前の式を括ることが先に立ったと説明しています。
原因1: 処理能力ではなく、「目的を保持すること」で止まっている
展開も括る操作も、それぞれ単独では実行できています。足りなかったのは新しい計算技術ではなく、「何のために今の式変形をしているか」を複数手の処理中も保持することです。
目の前の式に対して実行できる操作を探すだけになると、展開、因数分解、代入といった個々の操作が正しくても、解答全体は目的から外れます。この傾向は物理だけでなく、数学の文字式でも再発し得ます。
本人への返し:
「今できる操作を探す前に、この式を展開した目的を言い直そう。
消したかった項はどれ? 今の変形で、その項は減った?」
原因2: 「消去算を2回」の使いどころと利点が結び付いていない
文字式の二元連立一次方程式では、W を消して h を求め、別に h を消して W を求める方法を以前にも指導されていました。それでも今回は、一方を求めてから他方へ代入する方法を選びました。
これは指示を無視したというより、「消去算を2回する」という操作だけが記憶にあり、いつ、なぜ使うとよいかが理解と結び付いていなかった状態です。
今回の h と W は、どちらか一方が先に決まる主従関係ではなく、同じ2本の式から求める対等な未知数です。元の2式を共通の出発点として別々に消去すれば、複雑な分数の代入を避けられ、一方の計算ミスを他方へ伝えずに済みます。この見方があれば、教師の手順を思い出せない場面でも、自分で方法を選び直せます。
今回、優先して変えること
二つの原因に共通する課題は、操作を始める前に目的を短い言葉にし、処理後に目的へ近づいたか確認することです。次の1週間は、注意する項目を増やさず、ここへ絞ります。
練習1: 余白に「現在の目的」を書く
複数回の式変形が必要な問題では、計算の横に「W を消す」「h を求める」のように、現在の目的を短く書いてください。変形を一段行うたびに、目的の文字が本当に減ったかを見ます。減っていなければ、次の操作へ進まず、立案へ戻ります。
練習2: 同じ2式から二つのルートを作る
文字式の二元連立一次方程式では、代入を始める前に、片方を消す組合せを二つ作れるか確認します。今回の問題を一度だけ、次の二方式で解き比べてください。
- h を求めてから、その値を代入して W を求める
- 元の2式から W を消して h、別に h を消して W を求める
答えが合うかだけでなく、通分の回数、展開後の項数、最初の誤りが次へ伝わる箇所を比べます。有利な理由まで確認することで、手順を暗記し直すのではなく、次に自力で選べる状態を目指します。
次回のレビューで確認すること
時間を空けて同じ問題または同じ構造の問題を解いたとき、次の三点を確認します。
- 式変形の途中でも、消す項と求める量を保持できるか
- 複雑な分数を代入する前に、消去算を二つのルートで行えると気付くか
- 正答したかだけでなく、その方法を選んだ理由を説明できるか
同じ問題でできれば、まずは手順の保持を確認できます。別の設定でも自力で使えたときに、他の問題へ移せる力まで付いたと判断します。
追観測: 6日後に確認できた変化
6日後、同じ問題へ時間を決めて再挑戦しました。今回は、展開中も消去する項と求める量を見失わず、複雑な分数を元の式へ代入せずに、元の2式から消去算を2回行って h と W をそれぞれ正しく求められました。
したがって、今回の方法は少なくとも6日後の同一問題で再現できたと評価できます。一方、設定の異なる問題でも使えるかは、まだ確認できていません。「もう直った」と断定せず、次は別の文字式問題で同じ判断が自力で出るかを観測します。
